興信所での調査は必要なんだろうか、とふと思い立ちました。実際に依頼はしませんでしたが、興信所だろうが自分の手であろうが、不倫の証拠を見る作業は、筆舌に尽くしがたく、愛人には決して判らないことでしょう。だって自分は、他の女がいるのを承知で付き合っているのだから・・・
離婚すべきかどうか、離婚したいのかどうか。
何も判断できずふわふわしていた頃、興信所で浮気調査をした方がいいのか、ふと思い立ったことがあります。
証拠は十分押さえている・・・と思っていました。
けれどそれは過去のことだと言われれば、それまでのことになってしまいそうで思い立ったのですが、
今思えば、ただ単純に、今彼が何をしているのか、知りたかっただけかもしれません。
ある、浮気調査を専門にしている興信所へ電話してみたことがあります。
人のよさそうな、年配の女性が電話に出ました。
用件を述べると、彼女はこう言ったのです。
「奥さん。見てしまえば、それは一生傷となって残るのよ。
世の中には見なくてもいいことがたくさんあって、あなたにはまだ長い人生がある。
消えない傷を負って生きるには長すぎるわ。」
興信所にしてみれば、それが収益に繋がるわけですから事務的に受け付けられ、
調査に着手するのだと思っていました。
よもや興信所の方からこのようなことを言われ、
きちんと考え直すよう促されるとは思いもしませんでした。
後になって考えたのは、私はすでに、十分すぎるくらいの証拠を持っていたんだと思います。
実際、弁護士の先生にも、証拠集めの必要はありませんよと言われましたし。
だからこそ、これ以上何かを見る必要はないと、
この方は私がこれ以上壊れないように、後の人生をきちんと歩けるように、
私のために心を砕いてくださったんだと、とても感謝しています。
不倫の証拠は見つける度に、体中の血液が逆流する思いをします。
私にとって最初の衝撃は携帯のメールでした。
初めてそれを見たとき、心臓が跳ね上がり、体中が脈打っているような感覚があり、
全ての音が一瞬聞こえなくなりました。
私は世界に独りきりで、どこを探しても誰も見つからないような孤独感を瞬時に感じ、
全身に鳥肌が立ち、ものすごい吐き気に襲われてトイレに駆け込んだくらいです。
言うまでもありませんが、その夜は一睡もすることができず、
その日から不眠に悩まされる毎日が始まりました。
調査と言うと大げさですが、いてもたってもいられなくなり、
パソコンのメール、クレジットカードの明細書、机の中を初め、元夫のありとあらゆる荷物を調べ始めました。
見つける度に吐いてしまうと判っているのに、体が勝手に動くのです。
あらかたの調査らしきものを終えた頃、最後は元夫の通勤用の鞄でした。
中からスキンが出てきた時・・・
涙が止まりませんでした。
声は一切出ませんし、しゃくりあげるわけでもなく、ただただ大粒の涙だけがポロポロと流れ落ちました。
コンビニで売っているタイプのものです。箱にこそ入ってはいましたが、残数はもちろん少なくて・・・
夫婦生活がありませんでしたので、結婚して初めてそれを手にしました。
自分がどれだけ馬鹿にされていたかを知り、
一方で、夫婦生活が無いことで、彼が健康を害していたらどうしようと、さんざん悩んでいたので、
彼が健康だったことを喜ばしく思ってしまった自分がまた、悔しかったです。
でも、人を愛するってそういうことなんだと思いました。
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